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おすすめの腎臓ケアドッグフードを紹介・犬の腎臓病についても解説します。

執筆
  • 能瀬茉優 ( アニマルケアスタッフ:旧動物看護師 )

    獣医学部を卒業。
    アニマルケアスタッフ(旧動物看護師)として動物病院に勤務する傍ら、執筆活動を行う。

  • 犬暮らしプロジェクトチーム

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本記事では腎臓と腎臓病についての解説と、原因や症状に合わせたおすすめのドッグフードを紹介します。

腎臓と腎臓病を知る

まず、腎臓と腎臓病について簡単にお話しします。
腎臓は、尿を作るのに大切な役割を持っている臓器です。
血液が腎臓を通ると、必要なものと不要なものを選別しながら尿を作っていきます。濾過器(ろかき)のようなものだと想像していただけると分かりやすいかもしれません。
腎臓病は、この濾過器がだんだんボロボロになることで、必要・不必要の選別ができなくなったり、尿自体を作れなくなってしまう病気です。
原因はさまざまですが、腎臓の結石、尿道からの感染、中毒などがあります。
腎臓病には、さまざまな種類があります。

腎臓病の種類とは?

腎臓病の種類と原因となりやすい膀胱炎と尿結石についても以下に解説します。

膀胱炎と尿結石

基本的に膀胱は感染から体を守るための免疫機能が働いています。しかし、他の病気で免疫機能が低下したり、尿がうまく排泄できなかったり、尿道が傷ついていたりすると、尿道から膀胱に菌が上っていって膀胱炎を引き起こします。
また、糖尿病にかかっている子だと、膀胱の中に菌の餌となる糖が多く存在するため、菌が繁殖しやすい環境になります。
膀胱炎を引き起こす菌によって膀胱の中で結石ができやすい環境が出来上がり、ストラバイト、と呼ばれる結石ができます。
餌の種類によってはシュウ酸カルシウムという尿結石ができやすいこともありますが、犬の場合ほとんどがストラバイトです。
シュウ酸カルシウムはダルメシアンでできやすいので、ダルメシアンを飼っている飼い主さんは気をつけてください。
これらの結石ができると、膀胱の中を傷つけるので血尿を排泄したり、排泄自体が痛みを伴う行為なので尿の排泄の回数が減ります。
そして、1番怖いのは結石が尿道を詰まらせることによって、尿中に排出されるはずのアンモニアなどの有害物質が体内に留まり続けてしまう事です。
これによって急性腎不全を引き起こしたり、尿毒症という、身体中にアンモニアが循環してしまう病気に発展していきます。
尿結石がストラバイトの場合は食事内容を改善し、菌が発育できないようにすることで改善することがあります。シュウ酸カルシウムは膀胱洗浄や手術でよってのみ摘出できます。

腎盂腎炎

一般的に尿道から細菌が感染し、腎盂という腎臓の部位で炎症を起こす疾患です。腎盂は腎臓と尿管の接続部位を指し、腎臓で作られた尿を集めて膀胱へ送り出す働きをしています。通常無菌的な場所です。
しかし、雌の子(ブルドッグなどの短頭腫では特に)は股間を床に擦り付けたりすることで、菌の感染が起こりやすいです。股間から膀胱に侵入した菌が、尿管を通り腎臓まで達します。これを上行感染と言います。
これにより腎臓が障害され、排尿時に痛そうにしたり、血尿が見られます。初めは感染で起こる急性腎盂腎炎ですが、放置すると慢性腎不全に悪化します。
いつもよりおしっこの時間が長い、おしっこしながら痛そうに鳴く、おしっこに血が混じっている、窓の症状があったらすぐに動物病院で診察してください。

急性腎不全

腎臓に悪い薬を間違えて飲んでしまった、アレルギー反応が起こった、大量に出血した、などの理由によって腎臓が一時的に著しく傷害されることを指します。これにより、おしっこが通常より少ない量しか作れない、あるいは全く作れなくなります。体内にある不要なものを排出するものが尿ですから、体内に毒素が溜まり続け体調悪化します。
症状としては元気消失、食欲低下、嘔吐、下痢などです。

慢性腎不全

上記に挙げたような様々な腎疾患が数ヶ月〜数年継続して発症することで、慢性的に腎臓が障害され、多くの腎臓の機能が使い物にならなくなります。
腎臓は一度傷害されると萎縮してしまい、これは二度と戻ることはありません。
腎臓にはネフロンという、血液中の不要な老廃物を排出するための尿を生成する器官があります。慢性腎不全によってこれらが障害され、多く存在していたネフロンが機能を失っていくことで残っていたネフロンに負荷がかかり、今まで以上に急速にネフロンが傷ついていきます。
ネフロンは上記で申し上げた通り尿を作る器官ですので、傷害され数が減れば減るほど尿が作れなくなっていきます。経過としては、通常の尿→タンパク質や血が混ざった尿→尿の量が減る(乏尿)→尿が全く出なくなる(無尿)→死亡、となっています。
また、ネフロンには糸球体という、血液を濾過し尿の元となる液体(原尿と言います)を作る働きがあります。その糸球体自体が傷害され濾過できる血液量が減ると高血圧になり、目の血管が障害を受けます。
それ以外に、腎臓は赤血球を作るためのホルモンを分泌していますが、腎臓の機能が落ちることでこのホルモンの産生量が低下し、貧血になります。
他にも上記で述べた毒素が排出できないことで毒素が蓄積して、体調不良になる症状なども現れます。

いかに腎臓が体にとって大きな役割を果たしているかがお分かりいただけたかと思います。
感染からあっという間に慢性腎不全になったワンちゃんもいるので、可能な限り初期の段階で対処することが望ましいです。

腎臓ケアにおすすめのドッグフード

以上のことを踏まえた上で・・・

  • 腎臓に負荷をかけないフード
  • 慢性腎臓病になってしまった子に与えるフード

を紹介します。

腎臓に負荷をかけないドッグフード

まず、慢性腎臓病への悪化を防ぐためのフードを紹介します。

  • ロイヤルカナン ユリナリー(ドライ) s/o
  • ヒルズ 尿ケア 「c/d」「u/d」
  • ドクターズケア 犬用尿石ケア

腎臓に負荷をかける根本的な原因として、尿結石があります。
尿結石の説明で簡単にお話ししましたが、犬の殆どの結石はストラバイトという結石です。この結石はアルカリ状態の尿でできやすいので、酸性の尿を作れば防げますし、結石が溶けて無くなってくれることも少なくありません。そのためストラバイト予防や尿石を溶かすために、作られた尿を酸性にするフードがあります。
以下に紹介するフードはどれも尿のpHを調整することができ、動物病院でも尿石症になりやすい子や尿石がある子にも処方されます。
それぞれ簡単に説明します。

ロイヤルカナン ユリナリーs/o
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ロイヤルカナン ユリナリーs/o 1kg2,600(2024.02.06/Amazon)

大手のロイヤルカナンがストラバイトとシュウ酸カルシウムの治療のために研究し、作った商品です。
ストラバイトとシュウ酸カルシウムどちらも予防可能です。尿結石の原因の1つであるマグネシウムを始めとしたミネラルを調整しています。
そのため、尿を弱酸性に保つことができ、尿結石の発生を防ぎます。
また、肥満の子のことも配慮しカロリーも制限していますから、カロリー調整がで切るので尿結石予防と同時にダイエットも可能です。

ヒルズ 尿ケア  「c/d」「u/d」
ヒルズ 尿ケア c/d 3kg6,607(2024.02.06/Amazon)
ヒルズ 尿ケア u/d 3kg7,259(2024.02.06/Amazon)

ヒルズの尿ケアにはc/dとu/dの2種類あります。簡単な違いとしてはc/dがストラバイトとシュウ酸カルシウムどちらにも対応するのに対し、u/dはシュウ酸カルシウムのような尿酸結石に重点を置いています。
それぞれ説明します。
まずc/dは、膀胱結石の原因であるミネラルとpHを調整することにより、ストラバイトとシュウ酸カルシウムを予防する療法食です。
主に調整しているミネラルはカルシウムで、配合しているものはクエン酸カリウムです。クエン酸カリウムは摂取することで尿がアルカリ性になるのを抑えます。
これは腎臓病の治療においても使われるものの1つです。
また、尿路の健康を考え、炎症を抑える働きのある必須脂肪酸のオメガ3脂肪酸を含んでいます。これにより膀胱の健康維持も期待できます。
味はチキンフレーバーで、小型犬と大型犬で大きさも変えているので、食いつきも安心できるでしょう。
次にu/dについてです。
u/dはc/dよりも発症しやすい犬種がある程度決まっていたり、結石自体が厄介な尿酸結石に特化した療法食です。
まず、フードに欠かせないタンパク質を高品質・高消化なものに変えることで腎臓に負担がかかりにくいものにします。また、ヒルズの他の商品と比べナトリウムを低い値で調整しています。というのもナトリウムは多く尿中に存在することで尿中のカルシウム濃度も増えて、尿結石ができやすくなるからです。
その他にはc/dと同様に尿のpHを調整できるので、尿結石の予防が可能です。そして抗酸化成分が含まれることで免疫力を維持し、健康をサポートします。
味はチキンフレーバーですが、粒が大きめのようなので、小型犬に与えるときはカットなどが必要なようです。

ドクターズケア 犬用尿石ケア
ドクターズケア 犬用尿石ケア 1kg4,069(2024.02.06/Amazon)

ご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんが、動物病院には置いてある療法食のフードです。このフードはストラバイト、およびシュウ酸カルシウムの尿石症の犬の食事管理を目的としています。
ミネラル成分、アミノ酸を調整することにより、尿結石ができるのを抑えています。他には尿が弱酸性になる、尿量を確保するために栄養面からサポートする、身体的健康を支えるために、精神安定やコレステロール値に効果があり、アンチエイジングにもなる、トリプトファンを配合しています。

慢性腎臓病になってしまった子に与えるフード

腎臓は一度機能を失うと二度と機能が戻ることのない臓器です。
そのため一度腎臓病になったら健康な腎臓は戻ってこないですが、食事によってその進行を遅らせることはできます。
今回挙げるフードは、世界的に大手のドッグフードが獣医師や栄養士などの知識を結集させて腎臓病の子たちのために開発した療法食です。
どちらも腎臓病の子たちの症状を遅らせるための工夫がされています。
それぞれ簡単に説明させていただきます。

  • ロイヤルカナン 腎臓サポート+低分子プロテイン ドライ
  • ヒルズ プリスクリプションダイエット k/d ドライ
ロイヤルカナン 腎臓サポート+低分子プロテイン ドライ

犬のQOLを保つことを考え、慢性腎臓病の療法食として開発されました。腎臓に悪影響を与えると言われているリンを可能な限り制限しています。他には、慢性腎臓病になった影響で食欲があまりない子でもしっかりとエネルギーを取れるようなエネルギー量を調整しています。
他には、商品の名前にも記載されている低分子プロテインという食物アレルギーの原因となりにくい材料を使用しているため、現在の症状より悪化することを防いでくれます。

ヒルズ プリスクリプションダイエット k/d ドライ
ヒルズ プリスクリプションダイエット k/d ドライ 3kg6,601(2024.02.06/Amazon)

この商品もロイヤルカナンと同様に犬のQOLを維持するために開発されています。腎臓管理のフードですから、腎臓の負荷を軽減させ、まだ生き残っている腎臓を効率良く機能させるサポートをします。本商品はリンだけでなくナトリウムの比率を慢性腎臓病の子に合わせて調整されています。また、独自の開発で腎臓の健康をサポートする、腸内細菌を活性化する成分も配合しています。
なかなか食が進まない子でも少しの摂食量でエネルギーが十分取れるようにしてあることはもちろん、食欲のわかない子でも喜んで食べてくれるようなヒルズ独自の「おいしさテクノロジー」によって食欲を刺激するようにしています。

まとめ

以上が腎臓に負担をかけない、あるいは病態を進行させないための代表的なフードです。
愛犬が今どのような段階なのか、腎臓病になりやすい犬種なのか、など調べたり、獣医師に聞いたりして、その子に合ったフードを与えてあげてください。
1番は腎臓病にならないことが大事です。
原因となる膀胱炎などのサインはあらゆるところで見られます。

  • 散歩中の尿の回数が減った
  • ペットシーツの色がおかしい
  • トイレに行かないようにあまり水を飲みたがらない
  • 実際に飲水量が以前と比べて明確に減少した

などです
これはあくまで一例ですが、「いつもと違う」ということには必ず理由があります。
飼い主さんが1番良く愛犬の事を観察し、把握していますから、少しでも違和感を覚えたらすぐにかかりつけ病院で診察を受ける事をおすすめします。
すでに腎臓病になっている飼い主さんは、飼育環境に始まり、こまめな体調確認やフード選びなど、さまざまな面で大変だと思います。心配でたまらないと思いますが、愛犬にとって1番の薬は飼い主さんの愛情と笑顔ですから、今まで以上に愛してあげてくださいね。この記事が少しでも飼い主さんの手助けになる事を願っています。

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