肛門腺絞りは、多くのワンちゃんにとって定期的に行う大切なケアのひとつです。
肛門腺とは、肛門の左右に対になってついている袋状の組織のことで「肛門嚢」とも呼ばれています。
その中で、強いニオイのする分泌物がつくられます。
分泌物は、通常であれば便と一緒に排出されますが、ワンちゃんによってはうまく排出されず溜まってしまうため、定期的な肛門腺絞りが必要です。
肛門腺絞りは、動物病院やトリミングサロンで対応してもらえますが、飼い主さんが自宅でも比較的簡単にできるケアでもあります。
本記事では、自宅での肛門腺絞りの方法や肛門腺絞りの必要性について解説するので参考にしてください。
目次
肛門腺絞りの方法
まずは、肛門腺絞りの準備から肛門腺の絞り方、注意点までを確認しましょう。
肛門腺絞りの準備
- 準備するもの
-
- ティッシュ+ペット用のウェットティッシュ
- ビニール袋(なくても可)
肛門腺を絞って出た分泌物は、とても強烈なニオイがします。
肛門をティッシュやウェットティッシュで覆うと分泌物が周りに飛び散るのを防げます。
使ったティッシュはビニール袋に入れて処分するのがおすすめです。
シャンプー時にお風呂場などで行う場合は、シャワーで洗い流せるのでティッシュなどは必要ありません。
肛門腺絞りにまだ慣れていない人は、ワンちゃんが動かないように2人で行うといいでしょう。
1人はワンちゃんが後ろを向かないように顔を抑えてあげて、もう1人が肛門腺絞りを行います。
肛門腺の場所を確認
肛門腺は、肛門を正面に見たときに、時計の4時と8時の位置にあります。
肛門腺からは細い管が出ていて、押し出すと中の分泌物が出てきます。
実際にワンちゃんのしっぽを持ち上げて肛門腺の場所を確認してみましょう。
しっぽが下がっている状態では肛門腺が奥まった位置にあるので触ることは難しいですが、しっぽを持ち上げることで肛門腺が肛門近くまで寄ってきます。
この時、しっぽを上げすぎると嫌がるので、直角以上には上げないように注意してください。
利き手ではない方の手でしっぽを軽く持ち上げ、利き手で肛門腺を触るとやりやすいです。
肛門腺に分泌物が溜まっていると、半球状に膨らんでいるのが分かります。
肛門腺の絞り方
しっぽを持ち上げたまま、親指と人差し指の腹を使い、肛門腺のある4時と8時の位置から中心に向かって押し出すようにして分泌物を絞り出します。
正しい位置で絞り出すと、液体が中から出てくるのが感触で分かるでしょう。分泌物の量が多いと、勢いよく一気に飛び出すこともあるので注意してください。
肛門腺絞りの注意点
肛門腺絞りをする際は、力の入れすぎに注意してください。
指の力を入れすぎてしまうと、肛門腺にダメージがかかって炎症を起こす原因となります。
分泌物がなかなか出てこないと、つい力を入れてしまいがちですが、軽くマッサージをするような優しい力で押し上げるようにします。
最初は加減が分かりづらいので、まずは動物病院やトリミングサロンで実際にやっているところを見せてもらい、コツや注意点などを聞いてみるといいでしょう。
肛門腺絞りをする頻度
肛門腺絞りをする頻度は、犬によって個体差がありますが、健康な犬なら基本的には月1回程度が目安になります。
シャンプーをする時、同時に肛門腺絞りを行えば、お尻についた汚れもすぐに洗い流せるのでおすすめです。
トリミングサロンで定期的にトリミングやシャンプーをしてもらっている場合は、その時に一緒に頼むといいでしょう。
もともとシャンプーとセットで肛門腺絞りが含まれているサロンも多いです。
肛門腺絞りが必要なケースとは
肛門腺絞りは、全ての犬に必要なケアというわけではありません。
通常であれば肛門腺の分泌物は、便と一緒に出てくるので問題ないことが多いです。
一方で、犬種や年齢、健康状態によって、分泌物が排出されづらく、肛門腺に溜まりやすいワンちゃんもいます。
以下で紹介するのは、肛門腺絞りが必要なケースです。
小型犬
体のサイズでは、大型犬よりも小型犬や中型犬のほうが分泌物が排出されず、溜まりやすい傾向があります。
特にチワワやトイ・プードルなどの小型犬は、肛門括約筋の力が弱いため、排出にサポートが必要です。
肥満犬
過度に肥満の犬は、肛門腺の開口部が内側に入り込んでいて、分泌物を排出しづらくしています。
また、脂肪が邪魔をして肛門腺が圧迫されづらくなっていることも原因と言われています。
高齢犬
高齢犬になると、筋力が低下し、分泌物が自然に排出されにくくなります。
若い時は問題なかったワンちゃんも、高齢になったら定期的に肛門腺のチェックをしてあげましょう。
慢性的な軟便・下痢をしている
軟便や下痢の場合、肛門腺を便で圧迫することができず、分泌物が自然に排出されず溜まってしまいます。
そのため、慢性的な軟便だったり下痢をしている場合は、肛門腺絞りを定期的に行う必要があります。
肛門腺絞りをしない場合のリスクとは?
肛門嚢炎とは、肛門腺に分泌物が溜まった状態が続くことで、細菌に感染して炎症を起こしている状態です。
肛門嚢炎になると、肛門を気にして頻繁に舐めたり噛んだりします。
また、お尻を床に擦りつけたり、自分のしっぽを追いかけてグルグル回るなどの動作が見られることもあります。
以下のような症状が見られたら、肛門嚢炎を起こしている可能性があるので肛門腺の状態をチェックしてください。
- 肛門を頻繁に舐めたり噛んだりする
- お尻に床を擦りつける
- しっぽを追いかける
- 座り方や動きが不自然
- 落ち着きがない
- 排便時に痛がる
- 肛門周りからの悪臭
- お尻付近を触ると嫌がる
初期段階の症状は痒みだけですが、症状が進むと排便時に痛みを伴ったり、食欲不振や発熱を起こしたりします。
炎症している状態で無理に肛門腺絞りを行うと、さらに悪化する恐れがあります。
肛門周りが赤くなっている場合は、早めに動物病院で診てもらってください。
ひどい炎症や化膿が起こっている場合は、化膿止めや抗生剤などの薬を投与します。
肛門腺破裂の症状と治療法
肛門腺破裂は、肛門腺に分泌物が過剰に溜まって、肛門腺が破裂してしまう状態です。
破裂した箇所から出血し、肛門周りの皮膚が裂けて血や膿が出てきてます。
治療は、肛門周囲の毛を刈り、破裂した部位を生理食塩水などで洗浄・消毒し、残っている膿の排出を促します。
また、炎症や痛みを抑えるために抗生剤や消炎鎮痛剤を投与します。
自宅でも破裂した部位を清潔に保ち、状態によって、患部の洗浄や回復を促すためのクリームや抗生剤の軟膏を使用します。
ワンちゃんが患部を舐めると悪化してしまうので、エリザベスカラーが必須です。
肛門腺破裂を何度も繰り返す場合は、手術によって肛門腺自体を摘出するケースもあります。
肛門嚢炎・肛門腺破裂の予防
肛門嚢炎・肛門腺破裂を防ぐためには、ワンちゃんをよく観察し、状態に合わせて肛門腺絞りを行うことが1番の予防となります。
特に目立つ症状がなくても、日頃からワンちゃんの様子、便の状態、お尻周りに異常がないかをチェックするようにしてください。
また、肥満になると肛門腺に分泌物が溜まりやすくなるため、体重管理も大切な予防のひとつです。
適度な運動と適切な食事管理を心がけ、肥満になるのを防ぎましょう。
まとめ
肛門腺絞りは、ワンちゃんの健康を守るための大切なケアです。
コツさえ掴めばそれほど難しくないので、自宅で飼い主さんができるようになるでしょう。
ただし、ワンちゃんによっては、肛門腺が絞りづらかったり、分泌物が固くて絞るのが難しい場合もあります。
無理に自分でやろうとすると、ワンちゃんに負担がかかり、トラブルを引き起こす可能性も。
自分で行うのが難しい場合は、無理をせずに動物病院やトリミングサロンに依頼しましょう。