「大切な家族の一員である愛犬に元気で長生きしてほしい」は全ての飼い主さんに共通する願いではないでしょうか? そんな飼い主さんの願いを叶える手助けの1つになり得るのが「ワクチン接種」となります。ただ、ワクチンには複数種類があるため、どれが愛犬に適切なのか悩んでしまう方は多いと思います。
よって今回は犬のワクチンの種類や予防できる病気などについて解説していきます。
目次
必要なワクチンの早見表
犬のワクチンの種類は以下の表に大きく分類することができます。
生活スタイル | 混合ワクチンの種類 |
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生活環境に関わらず全ての犬に接種が推奨される | 5種 |
多頭飼いやドックランなどによく出かける | 6種 |
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8種 |
10種 | |
狂犬病ワクチンは法律で義務化されている感染症で全ての犬が生後91日以上の時点で接種し、その後1年に1度の接種が義務付けられています。 |
世界中の20万人以上の獣医師達がメンバーである「WSAVA(世界小動物獣医師会)」という動物の健康福祉の向上を目指している団体の中に「ワクチネーションガイドライングループ(Vaccination Guidelines Group, VGG)」があります。このグループがワクチンの種類やワクチンの接種頻度などについて指標となる「犬のワクチネーションガイドライン」をリリースしています。
なお、「WSAVA」はワクチン以外にも「アニマルウエルフェア(動物福祉)」や「動物の栄養学」、「動物へのCovid-19による影響」など様々な情報をリリースしており、項目によっては日本語にも翻訳されているため興味を持たれた飼い主さんは公式サイトで確認してみても良いでしょう。
混合ワクチンの種類とは?
「犬のワクチネーションガイドライン」では混合ワクチンを大きく分けて「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」の2種類に分類しています。
以下にそれぞれのワクチンについての解説をします。
5種混合ワクチンは?
この中の4つに含まれる「コアワクチン」というのは、どのような生活環境でも全ての犬に接種が推奨されるワクチンであり、以下の感染力並びに致死率が非常に高い病気を予防するワクチンをいいます。
- 犬ジステンパーウイルス(CDV)感染症
- 犬アデノウイルス(CAV 1)による犬伝染性肝炎
- 犬アデノウイルス(CAV 2)感染症
- 犬パルボウイルス(CPV-2)感染症
日本では現時点で上記の4種類のみを対象としたワクチンは販売されておらず、犬パラインフルエンザ感染症の予防を含む5種混合ワクチンが全てのコアワクチンを含む最も少ないワクチンとなります。
6種混合ワクチンとは?
5種混合ワクチンに追加して犬コロナウイルス感染症の予防が含まれるものを6種混合ワクチンといいますが、従来の犬コロナウイルス感染症を予防できるエビデンスが無いため「WSAVA」では推奨されていません。ただ、感染した犬の便に排出されたウイルスを口にすることで感染することに加えて犬コロナウイルスの感染力は非常に強いため、たくさんの犬が一緒にいる環境では感染が拡がってしまう恐れがあります。よって多頭飼いやドッグランなどによく出かける飼い主さんは、かかりつけの獣医師と相談の上、6種混合ワクチンを接種すべきかどうかを検討しても良いでしょう。
8種混合ワクチンと10種混合ワクチンについて
8種混合ワクチンでは6種混合ワクチンに追加して犬レプトスピラ感染症(イクテロヘモラジー型)と犬レプトスピラ感染症(イクテロヘモラジー型)の予防が含まれており、10種混合ワクチンでは犬レプトスピラ感染症(グリッポチフォーサ型)と犬レプトスピラ感染症(ポモナ型)の予防が含まれています。
レプトスピラ感染症とは
レプトスピラ感染症とは「レプトスピラ」という細菌が、人と人以外の多くの動物種へ感染する人獣共通感染症(ズーノーシス)であり、非常に多くの血清型が存在しています。主に保菌したネズミの尿で汚染された土や川から口、皮膚を介して感染するといわれていることから普段の散歩コースに水辺や土が存在していたり、川遊び、キャンプなどのアウトドアに行くことが多かったりする場合は感染のリスクが高くなると考えられています。
狂犬病ワクチンとは
混合ワクチンは可能な限り接種すべきですが、法律上での義務は存在せず仮に愛犬に接種しなくても飼い主さんに罰則などは存在しません。
しかし、日本において狂犬病ワクチンは「狂犬病予防法」という法律で接種が義務付けられており、怠った場合は20万円以下の罰金が科される可能性があるため注意するようにしましょう。
このように様々な種類が存在する犬のワクチンですが、前述したようにその接種スケジュールにもガイドラインがあります。
ワクチン接種のスケジュール
最後に、子犬、成犬ごとのスケジュールをご紹介しますのでぜひ参考にしてくださいね。
子犬における混合ワクチンの接種スケジュール
初乳(産後数日間に分泌される乳汁)を飲めているほとんどの子犬の場合は、生後数週間にわたって移行抗体によって感染症から守られており、多くは8 ~ 12 週齢までには効果が弱くなると考えられています。この移行抗体は感染症から守ってくれる反面、ワクチン接種による抗体の産生も阻止してしまうため、注意が必要となります。
ガイドライン上では以下のように案内されています。
子犬への狂犬病予防以外の混合ワクチン接種は6 ~8週齢で開始して16週齢またはそれ以降まで2~4週毎に接種を繰り返すスケジュールを推奨しています。
例えばワクチン接種を6または7週齢で開始すると初年度に混合ワクチンは少なくとも4回接種することになり、接種を8または9週齢で開始した場合は、必要な接種は最小で 3 回となります。
また、移行抗体の影響が長期間続いていることなどによって初年度の狂犬病予防以外の混合ワクチン接種に反応しなかった場合に備えて、確実に感染予防を行うための方法としてガイドライン上では26~52 週齢の間のいずれかの時点で再度ワクチンを摂取すること(ブースターワクチン)も提唱しています。
狂犬病予防ワクチンの接種スケジュール
狂犬病予防のワクチン接種は91日齢以上になったら初めて接種しますが、混合ワクチンを接種してからだと3週間から1ヶ月くらいの間隔をあける必要があります。また、狂犬病予防のワクチン接種後1週間くらいは混合ワクチンを接種することができないため、獣医師と相談してスケジュールを予め立てておくことをおすすめします。
成犬における混合ワクチン接種の頻度
ガイドライン上では、子犬の時のワクチンスケジュールが適切に完了している場合、狂犬病予防以外の混合ワクチンの再接種は3年もしくはそれ以上の間隔で行うことを推奨しています。
また、保護犬などでワクチン接種歴が不明の成犬(または16週齢以上の子犬)においては、狂犬病予防以外の混合ワクチンは1回接種し、それ以降は3年もしくはそれ以上の間隔の再接種にて問題がないと記載しています。
狂犬病予防ワクチンにおいては日本の法律上、年1回の頻度での接種がオーナーの義務となります。
まとめ
犬の混合ワクチンには予防できる病気の種類によって主に5種、6種、8種、10種が存在しており、どのワクチンを接種するかは犬の生活スタイルによってよく考える必要があります。
動物病院によって用意してある混合ワクチンの種類はそれぞれ違いがあるため、事前に電話などで確認しておくことをおすすめします。
また、狂犬病ワクチンの接種は飼い主さんの義務であることから忘れないように注意するようにしましょう。