犬暮らし

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盲導犬や警察犬などの引退犬の犬生とは?

執筆
  • 中村 千尋 ( 愛玩動物看護師 / ペット栄養管理士 )

    小学校時代の夢は「獣医師」
    高校生の時には、より患者さんに近く寄り添える「動物看護師」を目指し、専門学校に入学。
    卒業後、関西の動物病院で愛玩動物看護師として働きながら執筆活動を行う。

  • 犬暮らしプロジェクトチーム

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みなさん、盲導犬や警察犬など、役職を持つワンちゃん達がいることはご存知だと思います。
盲導犬、聴導犬、介助犬といった補助犬から警察犬、探知犬、災害救助犬などの使役犬まで、ワンちゃんのお仕事も多岐に渡ります。
ワンちゃん達も人間と同じで、歳を取るごとにやはり体力や嗅覚、瞬発力などに衰えが出てきてしまいます。そのため、補助犬や使役犬はお仕事の任期を終えたら現役引退をします。
では、そのワンちゃん達が引退した後はどういった暮らしを送っているのでしょうか?
最後まで幸せに暮らせているのか?など、気になっている方もいるかと思います。
そんな気になる補助犬や使役犬達の犬生をのぞいてみましょう!

人間の社会で活躍する使役犬とは?

まず、先程も紹介しましたが、使役犬といってもたくさんのお仕事の種類があります。
身体障害者に寄り添うパートナーである補助犬や警察犬などの使役犬、最近では犬種も幅広く活躍しており、ラブラドールやゴールデン、シェパードといった犬種のイメージを覆す小型犬達も活躍し始めています。
では、それぞれのワンちゃんが、どんな役割を担っているのか見てみましょう。

盲導犬

皆さんご存知盲導犬。目の不自由な人の生活の助けになってくれる補助犬で、外出時の誘導などが主な仕事です。例えば、信号待ちを教えたり、点字ブロック上の障害物を感知して教えたり、さらに曲がり角や段差を教えてくれて道を安全でスムーズに歩けるようにしてくれます。補助犬の中では1番登録数の多い種類ですね。

聴導犬

耳の不自由な人の生活の助けになってくれるのが聴導犬です。生活のあらゆる音をユーザーさんに伝えてくれます。例えば、チャイムの音や電話の着信、やかんの笛やタイマーの音、お子さんがいる家庭では赤ちゃんの泣き声なども教えてくれます。聴導犬は、ユーザーの体にタッチして知らせてくれます。その為、今は小型犬の聴導犬も増えてきています。

介助犬

介助犬はその名の通り、体の不自由な人を介助してくれるワンちゃんです。車椅子などで生活しているユーザーさんのため、ドアの開閉や下に落ちたものを拾う、靴を脱がせたり指示したものを持ってきてくれたりと大活躍です。なんと、冷蔵庫の中のものまで、自分で開けて持ってきてくれるのです!物の名前や入ってる場所まで覚えていられるなんて、ワンちゃんは私たちが思ってるよりずっとずっと賢いですよね。

警察犬

警察犬は、嗅覚に頼って行動します。遺留品などから犯人に結びつく匂いを嗅がせて覚えさせて、同じ匂いのするところや物を見つけてくれます。さらに吠えて知らせたり、犯人を目の前にして噛み付いて確保する、という訓練を受けているワンちゃんもいます。よく見る犬種はシェパードなどですね。かっこよくて頼りになりますね。
映画やドラマなどでよく見る警察犬ですが、現代も捜査にワンちゃんの助けを借りることは珍しくないようです。人間には無い鋭い嗅覚で助けてくれる使役犬です。

救助犬

救助犬には大きくわけて3種類あり、山岳救助犬、水難救助犬、災害救助犬にわかれます。災害救助犬は、地震などの災害で行方不明になった人を、所持品などから匂いを辿り見つけてくれる役割を担っています。山岳救助は山で遭難した人を、水難救助は海や湖などで溺れた人を捜索するお仕事です。

探知犬

代表的なのは麻薬探知犬ですね。空港などでよく活躍しているワンちゃんです。乗客の手荷物の中に麻薬や危ないものがないかどうか、匂いだけで判別します。また、食べ物の持ち込みなども制限されているので、手荷物の中の食べ物の匂いにも反応して教えてくれる、非常に優れた嗅覚を持つワンちゃん達だからこそできるお仕事です。よく活躍しているのがビーグルですね。大きな垂れ耳は匂いをさらに鋭く嗅ぎ分けるために進化したと言われているくらいなので、このお仕事にはピッタリですね。

使役犬の引退後の生活とは?

使役犬として人のために活躍する使役犬はは大体10歳前後で引退します。健康で長生きできても、大型犬であれば3~4年程度、小型犬であれば5~6年程度の余生かと思います。
引退後の生活を紹介します。

補助犬(盲導犬や介助犬など)の場合

里親にもらわれる

1番多いパターンはこれではないでしょうか。補助犬には、引退犬飼育ボランティアというものが存在し、応募し条件が合えば引退後のワンちゃんを引き取ることができます。それでもらその残りを幸せで楽しく過ごせるために、安心できる家庭へ譲渡する団体さんが多いようです。使役犬から家庭犬へ変わり、愛されて暮らせるのです。

パピーウォーカーの元で余生を暮らす

補助犬は、子犬の頃は約1年間、パピーウォーカーとよばれる預かりボランティアさんの元で生活します。社会性を身につけたり、いろいろなものに触れて成長していくためです。パピーウォーカーは原則1年後に協会にワンちゃんを返さないといけない決まりですが、試験に合格できなかった場合や、無事補助犬として活躍したのちの引取りには名を挙げることができます。現在は、パピーウォーカーでない人への譲渡を徹底している団体さんもあるようですが、家庭犬として余生を過ごす生活を送るようです。

施設などで活躍する

出身の盲導犬協会や介助犬協会などで、施設周りをする時の看板ワンちゃんとして活躍するケースもあります。いろんなイベントに出演し、病院や施設などにセラピードッグとしてお仕事しに行ったりと、活躍の場は多岐にわたります。

老犬ホームに入る

盲導犬老犬ホームというものが存在し、そこで楽しく仲間と過ごすというワンちゃんも少なからずいるようです。特定の飼い主さんはいないですが、ほかの仲間と楽しく過ごし、24時間体制でお世話してもらえるので、こういった幸せも悪くないのではないでしょうか。

警察犬の場合

飼い主の元に帰る

警察犬といっても実は2種類あり、直轄警察犬と嘱託警察犬とにわかれます。
嘱託警察犬とは、一般家庭で飼われているワンちゃんが自宅で訓練し、そのスキルが合格ラインにいた場合に警察から委託される警察犬です。本来は飼い主がいるワンちゃんになりますので、引退後は飼い主さんの元で再び暮らすというパターンが多いようです。

警察内の施設でそのまま暮らす

上記の嘱託警察犬とは違って直轄警察犬は国が管理している警察犬なので、基本譲渡が禁止されています。そのため、引退後も家庭犬になることはなく警察の管内で暮らしていくことになります。その中でも、啓発運動の参加やPR活動などで、引退後も警察犬として活躍しているワンちゃんもいるようです。

里親にもらわれる

嘱託警察犬のうち、飼い主の元に帰れないワンちゃんは、里親にもらわれるケースがあります。警察犬引退後は訓練施設に戻るのですが、そこでは常にお世話してくれるような要員がいないため、家庭に引き取られたほうが幸せだという考えで、里親を探すことがあります。直轄警察犬と違って、犬種も定められていなくて小型犬も多い嘱託警察犬なので、引き取り手は恐らく多いのではないかと思います。

使役犬として引退犬を引き取った人の声

実際に使役犬を引き取った方にお話を聞いてみました。

まずは愛犬について紹介をお願いします。

14歳の黒のラブラドールレトリバーで、ボルツと言います。とある仕事をしていた犬で引退してから我が家に来てくれました。

引き取りを決めた経緯はなんだったのでしょうか?

きっかけは知り合いの紹介です。ボルツが我が家の子供たちに会った時に実に楽しそうにしていたのですが、子どもが怖がらないように遊んでくれたことが第一印象です。ラブラドールは遊ぶのが好きだと後から知ったのですが、それにしても子どもたちにとてもよい距離感を取ってくれたのが印象的な犬でした。
犬を飼ってみたいという思いはそれまでにありましたが、私自身が子供の頃に近所で飼われていた犬たちに良い印象を持っていなかったので最初は正直怖かったです。近所に飼われいたシェパードが塀から飛び出してこんばかりの勢いで通る人に吠え掛かっていたので、大型犬に関してとても印象が悪かった思い出がありまして。
私と違って子どもたちは動物園でも物おじしないで動物に興味津々で、リャマがいる動物園でずっとついてこられても怖がりもしない子たちだったんです。そのせいか犬の時もほとんど怖がりもしていないようでした。その犬が子どもたちと楽しそうにゆっくり歩きながら散歩をして、撫でさせてくれて、時折子どもたちを気かけるような仕草をしてくれるのを見てとても気に入りました。この子なら大丈夫だと思えました。
引き取りに行くまでに二度ほど会いに行きましたが、いずれの場面でも子どもたちを気にしてくれる仕草をしたことで子どもたちのほうが気に入っていました。その後我が家に来てくれた犬なんです。

初めてお家に迎えた時の様子はどうでしたか?

家の車で主人が迎えに行きましたが、呼び止めたら覚えてくれていたようでしばらくぶりに会ったのに大喜びで尻尾を振ってくれたそうです。それから我が家に車で揺られて帰ってきて、子どもたちと出迎えたらこれまた大喜びしてくれました。

ボルツはほかの犬たちと犬舎にいたのですが、そう思って私たちも犬小屋を用意して外で飼えるように準備していました。ところが連れてきた最初の夜、ずっと切ない声で家の外で鳴かれました。「どうして私だけ外なの~クゥ~ンキュウ~ン」というように本当に窓越しにずっと鳴いて鳴いて切なすぎて、結局家の中に入れました。その時のホッとしたような満足そうな笑顔は忘れられないです。

私たちもせっかく迎えたボルツを外につないで一人ぼっちにするというのはなんというか気持ち的に違うな~と思って、その後は外が半分、家の中が半分という生活をしてもらうようにしました。
ご飯が突然変わるとストレスになるからと知人に聞いていたので、ご飯はそれまで食べていたご飯を少しいただいてきて、自分たちが用意した市販のご飯と混ぜてあげました。初めは食べなれたご飯を9市販を1の割合から始めて割合を変えながら混ぜていき、市販のご飯に10日ほどをかけて変えていきました。おかげでスムーズにご飯を変えることができました。

ワンちゃんはどのように変わっていきましたか?

仕事をしていた時のボルツを見て知っているのですが、最初の頃は仕事に行かないの?というように私たちの後をよくついて回りました。たぶんボルツの日常がある日を境に急にお昼寝とお留守番の多いものに変わってしまったために困惑していたんだと思います。一人ぼっちでいる時間がそれまではほとんどなかったこともあって寂しかったのかもしれません。「まるで社畜だね」なんて家族で話していましたが、なるべく誰かと一緒にいる時間を作るようにしました。

お仕事してた犬というのはその仕事を楽しむことを教えているらしいので、人間みたいな社畜ではないそうです。実際、仕事をしていた時のボルツは犬の笑顔が出ていて楽しそうでした。仕事を離れてからのボルツは周囲に同僚の犬も人もいなくなったためにさみしがりやからの甘えん坊になったようです。

知人の話ではボルツは生まれつき女王様気質だという話だったのですが、我が家に来てからは子どもたちのお姉さんという位置に収まってもいます。子どもたちが大きくなってからも小さな子どもたちの記憶のままなのか暗い時間でのお散歩になるとすぐに子どもたちに「帰るよ」と促すように引っ張って帰ってきてしまいます。年齢的にはおばあちゃん犬だとはわかっているのですが、本人は昔のようにお姉さんのつもりで子どもたちに優しい子です。

使役犬を迎えて良かったことはなんですか?

良かったことはいくつかあります。まず、人と仕事をしてきた犬のために基本的な「ふせ、待て、座れ」が問題なくできることです。これができないと仕事をする犬としては不合格のラインらしく、仕事をしていた時の犬たちはきちんと指示に従える犬でした。
ボルツが我が家に来てからもその姿勢が変わらず、きちんと指示に従ってくれます。ただ性格的には甘えん坊で少しわがままが出ることはありますが、それは人間だって年齢を重ねた結果出るものですから見守っています。

次に人が大好きで仕事についてくれていた犬たちなので、たとえ引退犬であっても新しい主人にとても人懐っこくいてくれることです。どんな性格の犬なのかでも違うかもしれませんが、仕事をしていた時の相棒がきっとそれぞれにいたはずですから人のことは好きだと思います。
最後にそこまでしつけに悩むことがなかったことです。室内でするトイレに関してはボルツは、どうしても外がいいとアピールしてきたので外でさせることに我が家では決めました。でもそれ以外にしてはいけないことは一度叱ると理解してくれてほとんど悩んだことはありませんでした。

逆に困ったことなどはありますか?

元々犬舎で飼われていたこともあってボルツのトイレは基本は外で、本人にとってそれが一切変わらなかったことです。子犬の時に家の中にトイレがあると教えられれば違ったのかもしれませんが、我が家に来てから家の中のココならトイレができるという場所をなかなか覚えてもらえませんでした。
何度も誘導したりしましたが、限界まで我慢してしまって体調を崩しかねない状況が続きました。
結局、本人の意思を尊重してそこは家族がトイレに連れて出るということで落ち着きました。
もちろんこれは本人の性格によるところだとは思いますから、引退犬は室内トイレが覚えられないとかいうことではないと思います。

また、困ったこととは少し違うかもしれませんが、ボルツの同僚引退犬がどんどん亡くなっていっていることが気になっています。ボルツにも脂肪種なのかガン化したものなのかができてしまっているのですが、年齢を考えて自然の寿命に任せることにしました。私たちは理解した上で引退犬を引き取りましたが、いつかくるお別れが近いのかもしれないと思うと胸が痛いです。でも仕事を一生懸命やってくれていたのだから、今はスローライフを楽しんでほしいなと思っています。

ワンちゃんは家族にとって、どのような存在ですか?

私たちにとってボルツは子どもたちの姉であり、昼間の私のよき話し相手であり、主人のよき忠犬です。できるだけ長生きして私たちと楽しく毎日を過ごしてほしいです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?私たちの生活の中に、ワンちゃんの助けがどれほど多くどれほど助かっているのか、実感しましたね。補助犬や使役犬の中でもたくさんの種類があり、それぞれとても大切な役割を担っています。
そんなワーキングドッグ達の引退後は、幸せな道を歩んでいることが多いと知り安心しましたね。余生を家庭犬として暮らす子が多い中、ほかの幸せも数多くあり、どれが正解かなんてわかりません。ワンちゃんの性格や状況で、その子の1番の幸せな引退後の生活を選択できると、私たちのために頑張ってくれたワンちゃん達へのせめての恩返しになれぱと私は思います。

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